「あの歯医者！予約したのに、いつも待たされる！
　とお怒りのあなたへ・・・」
日本の保険医療の裏事情についてお話しますね。
時々、受け付けのスタッフが患者さんに、お叱りを受けます。
「予約通りに来てるのに、いつまで待たせるの？」
みたいな感じです・・・。
あなたのおっしゃる通りです。
申し訳ありませんが、私たちもお待たせしていることは
十分承知しています。
　
こんな事を書くと
「だったら、何とかすればいいじゃない！」
とまたお叱りを受けそうです。
ではどこに問題があるのでしょう？
まずは、日本の歯医者さんの
治療スタイルについて考えてみましょう。
欧米（日本でも一部の自費治療専門医院）では、
一人の患者さんに一時間から
二時間の時間をとるのは当たり前になっています。
一人の歯医者さんが、一日に診る患者さんの数は４～５人です。
　
当然、歯医者さんはその時間は、一人の患者さんに
つきっきりで治療にあたります。
当然、あなたをお待たせすることはありません。
私だって、出来る事ならそうしたいです。
ところが日本だと、
５分、１０分歯医者さんが何か処置をして、
その後アシスタントなどが後を受け、
しばらくしてまた歯医者さんが数分担当して
といったスタイルです。　
一人の患者さんに、３０分以上つきっきりという事態は例外的です。
あなたは驚かれるかもしれませんが、
この日本スタイルをとっている国を私は知りません。
　
　一度に二人以上の患者さんを担当するというスタイルは、
世界中探してもおそらく日本だけでしょう。
あと思いつくのは戦場ぐらいなものです。

まさに、野戦病院です・・・。

　どうして日本がこのような独特なスタイルを
取り入れるようになったかは知りませんが、
コストを下げて効率のよい診療をするための
苦肉の策なのではないでしょうか？
何故なら、日本の保険治療での歯科治療費は
どこの国からみても異常と思えるほどの安さなのです。
あなたは意外に思うかもしれませんが、事実ですよ。
信じないなら「歯科治療費の国際比較」って、検索してください。
　 今も昔も、１人あたりの１ヶ月の治療費が平均以上だと
歯科医院は保険課からなんらかの指導があるのです。
こうやって医療費を抑えようとしているようです。
ちなみに私は、２代目の私に引き継いでから
２０年以上になりますが、保険課の指導を
１度も受けた事がありません。
意図的に、平均点を抑えている訳ではありません。
もっと上げたいくらいです。
しかし、丁寧に治療をすると逆に平均点は下がるのです。
(おかしな話です)
日本のこのやりかたも乱暴だと思いますが、
ことの是非はさておき、
その平均値というのが１、５００点ぐらいだそうです。
一週間に一回通院したとして、月に３、４回とすれば
５００点か４００点が１回の平均値になります。
１点１０円ですから、３割負担の人は
１、５００円から１、２００円です。
どうですか？
歯科医院で払っていた費用は、こんなものじゃありませんでしたか？
あなたが支払っているお金の約３倍が、
歯科医院の売り上げなのですよ・・・。
私の医院では、
治療で３０分以内に終了する患者様はいませんよ。
　保険治療は時給にしたら、
１，０００円カットの理容室より低いのですよ・・・。
１日に３０人ぐらい受けて、
１日１３５、０００円ぐらいの売り上げになります。
１ヶ月６日の休みと４回の半日として、
およそ３００万円の売り上げです。
国が公表している、日本の歯科医院の
保険医療収入の全国平均が、２８０万円です・・・。
　自営業の経験のある方なら、たいした事業にはみえないでしょう。
１日に３０人受けてこんなものです。
　数千万円の投資をして（建物からなら億）、数人のスタッフを使い、
朝から晩まで働いてこんなものです。
何年か前、ＮＨＫの「おはよう日本」で、
歯医者の倒産続出というような
テーマで特集をやっていたので
御覧になった方も多いのではないでしょうか。
私の友人も、何年か前に夜逃げしましたよ・・・。
歯科医の４人に一人が、年収３００万円以下の時代ですよ・・・。
あなたに叱られないように、
時間通りで快適に、そして最高の医療を提供するのは簡単です。
　日本以外の国の様に、
それに見合った治療費が頂ければ即座に解決です。
あなたは歯医者さんに、毎回３万円支払えますか・・・？
日本はこんなに低い料金なのに、
一人当たり一ヶ月に１５，０００円以上
売り上げを上げると、役所からいじめられます。
　しかし、もっとたくさんの患者さんを受けるようにしないと
経営はよくなりません。
一方、１日３０人ということは、
１０時間働いても、１時間あたり３人です。
一人あたり２０分です。
１日１０時間以上働くのも簡単ではありません。
スタッフが、夜帰れないような時間になってしまいます。
今だって、あなたが帰った後に
器具の消毒や事務仕事で、１時間くらいは帰れないのですよ・・・。
日本では１回２０分、歯医者に担当してもらうのが上限でしょう。
これ以上はどこかに無理があります。
歯医者さんがお金持ちだった時代、
歯医者さんは一日に１００人とか２００人
診療していたそうです。
３００人という人も聞いたことがあります。
１００人だと１時間１０人。１人あたり６分。２００人だと３分。
３００人だと２分！
いったい、２分、３分で何ができたというんでしょう？
私は市内の小学校で、校医をしています。
流れ作業で、次々とお口の中の状態を記録するだけでしたが、
３時間で約３００人でした。１人あたり１分３０秒です。
一昔前の治療が、どんな治療だったか想像すらつきません。
　麻酔などは、本当にしないとどうしようもないときだけに
限られていたでしょう。
　
　少々の痛みは我慢させられたと思いますよ・・・。
表面麻酔もしないで、
麻酔を一気にうつので痛い注射だったと思います。
こんな極限状態の中で、治療を怖がる子供にたいして、
その気持ちや恐怖心を思いやって治療するなんてことは
とても望めなかったと思います。
　もっとも、今でも子供の治療は大変ですが・・・。
私、子供は好きですが、泣いている子供の治療は嫌いです・・・。
まったく時間が読めないのです・・・。
小児科が少ない理由が解ります・・・。
　そして日本人の深層心理に
「歯医者は怖い！歯科治療は痛い！」
という印象を植え付けてしまったんじゃないでしょうか。　
（今でも、麻酔をしないで治療をする医療機関もあるらしいですが、
やはり経費節約のためなのでしょうか？）
　医療費のことを心配せずに病院にかかれるという
素晴らしい社会を目指して作られた保険制度だったのでしょうが、
反面、暗い面ももたらしたと思います・・・。
　そしてもう一つ。国民に医療費は安くて当たり前と
感じてしまうという事態を招いたのも事実だと思います。
　　ときどき仕事で海外に赴任される方が、
海外は治療費が高いから、日本で治したいとおみえになります。
　ここで良く考えなければいけないのは、
海外の治療費が高いのではなく
日本の保険の治療費が安すぎるのです。
　日本でも精度の高い、高品質な治療は高額です。
海外となんら変わりがありません。
そして、本来治療はすべて精度の高い、高品質な治療が必要です。
　　歯科治療は特殊で、内科のように診断して、
お薬を出しておしまいという訳にはいきません。
　　一人ひとり、そして一本一本の歯も、
まったく違うオーダーメイドの治療が要求されます。
　　　そんな、オーダーメイドの手のかかる治療が
流れ作業で出来るでしょうか？
　
　あなたは保険の治療でも、悪いわけは無いと考えたい
気持ちも解かりますが、残念ながら私たち専門化からみれば、
不十分な治療がほとんどです。
　最高の医療が、日本だけ安い料金で受けられると
考えるほうが無理があります・・・。
　
　あなたが治療に望んでいるもの、当たり前にやってくれていると
考えている事、
医療なのだからやって当然と思われていることを世界一安い
日本の保険医療費で実践する事は、困難を極めます。
　手袋もマスクも毎回交換、注射針は使い捨てのもの、
麻酔のカートリッジも使い捨て、
全ての器具は滅菌されていることを望んでいて、
時間通りに、その上で十分な時間をかけた治療を望んでいて、
その材料もドイツ製、日本製の最高品質のものを
使用して欲しいと思っているのに・・・。
　参考までに、この記事も読んでくださいね！
★歯を削る機器、7割が使い回し・・・」って知ってますか・・・？
　現在の保険医療費でそれをすれば、
あたりまえに大赤字です。
倒産です。
　　たまに、私が保険治療の患者さんに１時間つきっきりで治療をすると、
「ありがたい」と感謝されることがあります。
たしかに、経営は成り立ちません。私のこだわりのようなものです。
　そして、私を信じて高額な自費治療を選択して頂ける
患者様が多い事にも助けられています。
現在の日本の治療スタイルは異常です。
　その異常な国のことを基準にして物事を考えると、
誤った判断を招きかねません。
一度に３人の患者さんを受けるスタイルがまともか、
一人の患者さんに１時間以上かけるのがまともか。
野戦病院以外で、複数の患者さんを受けるような診療スタイルが
他の国にあるか？
　日本の常識は世界の非常識という言葉がありますが、
こと歯科医療に関して日本はかなり特殊な国です。
　そして本当に、あなたの大切な身体を１番に考えるなら
保険外の精度の高い治療を選択するべきです。
　そして治療の質より、安いことを最優先される方には
日本の保険は最高です。
　価値観は、人それぞれです。選ぶのはあなたです。
あなたの知らない歯科業界の裏事情です、
参考になりましたか・・・？
ではまた。