「内緒の話ですが、
　どうせ生え替わる乳歯の治療は、
　必要無いって知ってますか？」
　以前も書きましたが、
私の医院では、子供を虐めない治療を目標にしています。
もちろん、大人のあなたも虐めませんよ（笑）
　そのひとつの取り組みとして、
乳歯の虫歯の治療は、基本的にはしません。
　ほったらかしです・・・。
　正確には、
虫歯の穴に、痛み止めのお薬を詰めたりはします。
　基本は、応急処置のみです。
　他院のまじめ？な先生のように
嫌がって泣いている子供を、
なだめたり、叱ったりして歯を削り
銀歯を詰めたり、被せ物をしたりしません。
理由は、子供が歯医者さん嫌いになって欲しくないからです。
　歯医者さんには、予防のためこれから
子供達が老人になるまで
定期的に一生通院する場所なのに
行きたくない場所ナンバーワンにして欲しくないから・・・。
　でも一番の理由は、別にあります。
ここだけのお話なので、小さな声で言いますね・・・
そもそも乳歯は、
いずれ生え替わるので
必要ないからです。
頑張って虫歯の治療をしても、１２歳前後で抜けてしまうのです。
どうせ抜けちゃうんだから、痛くなければ放置すれば良いのです。
　どうしても虫歯の穴が気になるなら、
応急処置に、痛み止めのお薬を詰めて置けば充分です。
忙しいお母さんも、何回も虫歯の治療に通院する必要もありません。
子供もお母さんもダブルで嬉しいですよね？
でもこんな事を言うと、あなたのかかりつけの歯医者さんは
「その歯医者さんは、どうかしてるんじゃないの？」
「そんなこと、信じちゃダメだよ」
って、きっと言います。
　なぜなら、その歯医者さんはこんな事を考えているからです。
①せっかく検診で虫歯が見つかったり、
お母さんが虫歯に気がついてくれたんだし、
歯医者は治療するのが当たり前だから治療する。
大学でも、乳歯の治療法を習ったから治療する。
②そもそも深く考えないで、虫歯だから治療する。
③乳歯の虫歯を放置すると、後から生えてくる永久歯の歯並びが悪くなる。
④治療した方が儲かるから治療する・・・
みたいな感じだと思います。
　あなたもかかりつけの先生に、こんな事を言われませんでしたか？
「乳歯の虫歯を放置すると、後から生えてくる永久歯の歯並びが悪くなる。」
「特に乳歯の、歯と歯の間の虫歯を放置すると、
その下から生えてくる永久歯の生える場所が無くなりますよ・・・」
　実は、私も同感です。まったくその通りです。
「だったら、治療しろよ」
って感じですよね・・・。
　でも、私が治療をお勧めしないのは
治療しても無駄だからです。
手遅れなのです。
　理由を説明しますね。
あなたは、そもそも乳歯の役割は何だと思いますか？
　もちろん歯なので、食べる道具は当たり前ですよね。
その他、発音とかにも影響しますよね。
　でも何よりも大切な乳歯の役割は、
乳歯の下から生えてくる、
永久歯のスペースを確保する事なのです。
ところが、乳歯の歯と歯の間に虫歯ができると、
歯の幅が虫歯の穴の分だけ小さくなります。
　そのために、
後から生えてくる永久歯の隙間が、
足りなくなるのは間違いありません。
お母さんにとっては大事件ですよね・・・。
　でも、すでに虫歯で穴が空いて
乳歯の幅が足りなくなった状態で、
その穴を埋めても意味が無いのです。
だって虫歯の穴を埋めても、乳歯は小さなままですから・・・。
　もしかして、意味不明ですか？
説明しますね。
実は人間の歯は、
後ろから前に移動するようにできています。
自分の場所より前の歯が虫歯になると、
虫歯の穴に後ろの歯が食込んできます。
　歯を抜いても同じ事が起こります。
あなたも経験があるかもしれませんが、
抜かれた隙間に奥歯が倒れてくるのです。
　さらに乳歯の奥歯の後ろに、永久歯の６歳臼歯が生えてくると、
さらに強い力で乳歯の奥歯を押すのです。
　お母さんが、乳歯の虫歯の穴に気がついた時には
すでに後ろの歯が虫歯の穴に食込んでいる事がほとんどです。
隙間はすでに足りなくなっているのです・・・。
　穴をふさいでも、虫歯の穴に食込んだ奥歯が邪魔して
本来の乳歯の大きさには戻せないので
治療しても無意味なのです。
　さらに、多くの歯医者さんが見落としている問題があります。
　ぱっと見は、虫歯や歯並びが綺麗な子供さんでも将来
永久歯が生えてくると、歯が並ばない子供さんがたくさんいることです。
「うちの子は、虫歯や乳歯の歯並びも綺麗だから大丈夫だ～」
と、安心できないのです。
何が問題なのかと言うと、歯と歯の重なり具合です。
ぱっと見は、綺麗に歯が並んでいるように見えても、
よ～く見れば、お隣の歯と少し段差があって
重なっているようだと要注意です。
　実は、これは子供に限った事ではありません・・・。
良く患者様に言われるのですが、
「私の歯は、昔は歯並びがすごく良かったんです」
「でも年をとったら、歯並びが悪くなってきたんです・・・」
みたいな感じです。
　あなたも心当たりがありませんか？
ということで、次の事を覚えておいてくださいね！
①人間の歯は、奥歯（後ろの歯）に押されて前に移動する！
②そのしわ寄せが、前歯に出てきて歯並びが悪くなる！
ここまでは、なんとなく理解できましたか・・・？
　では、解決法です。
①乳歯が虫歯になり、永久歯の並ぶ隙間が足りないと予想される時
②さらに、歯並びが綺麗でも専門家が見れば歯の重なりが見られる時は
この装置を装着してあげてください。
名前は、３Ｄリンガルアーチワイヤーと言います。
　目安として前歯が２～４本と、
６歳臼歯が生えてきたら、装着可能になります。
これを装着すれば、
乳歯の虫歯なんて痛くなければ放置して下さい。
　このワイヤーがしっかりふんばって、
６歳臼歯が前に押してくるのを防いでくれます。
乳歯の隙間をしっかり保ってくれるのです。
極論ですが、虫歯で乳歯を全部失っても大丈夫です。
さらに、虫歯で失われた乳歯の隙間を増やす事も出来ます。
悪化すれば歯を抜く矯正になるのを、未然に防ぐ事が出来ますよ。
違和感は、すぐに慣れますので心配ありません。
周りのお友達にも矯正装置が入っているのもバレませんよ。
　表側に針金をくっつける従来の矯正法は、
周りのお友達にバレるので嫌がられる事が多いのですが
これならまったく心配ありませんよ。
お友達が知らない間に、内側から歯並びが改善されるのです。
　理想的には、仕上げの段階で表側にワイヤーを装着する事を
お勧めしていますがワイヤーの装着期間もかなり短縮されますよ。
では、模型で説明しますね。
これは下の歯に装着した状態です。
内側に細い針金が１本あるだけですよ。

後ろから見るとこんな感じです。

　舌の下に隠れるので違和感もありません。
子供さんはすぐ慣れますので、まったく心配はありませんよ。
　以前は下の写真のような装置も使っていましたが、
最近は違和感が多いのでやめました。
床矯正装置と言います。目的は同じなのですが
子供さんの負担が大きいのです・・・。

後ろから見るとこんな感じです。
かなり厚みがあります。
舌のストレスも大きいのです。

　実際の症例です。
前歯にデコボコがありますね？
このままだと、奥歯に前歯が押されて重なりがひどくなり、
せっかくの永久歯の隙間が失われ
前歯のデコボコが悪化する可能性が高いのです。
一番奥から２番目の歯が乳歯の奥歯です。
一番奥の歯が６歳臼歯です。

そこに３Ｄリンガルアーチワイヤーを装着しました。
これで奥歯に押されて、前歯のデコボコがひどくなる危険が無くなりました。

そして、乳歯の奥歯が抜けました。

乳歯が抜けても奥歯の歯と歯の間に、隙間があるのが解りますか？
ワイヤーが踏ん張って、隙間を保ってくれたからです。
さらに前歯のデコボコが少しずつ治ってきています。
これは唇の力で治しているのですよ～！
もう少しで、前歯は勝手に並びます。
　人間ってすごいですね～！
良い条件さえ与えてあげれば、
後は勝手に理想的に仕上げてくれるのです。
いかがですか？
子供を虐めない、見えない矯正治療です。
　最後に、あなたの周りの小学生で
表側に針金を付けているお友達がいたら
教えてあげてくださいね。
　小学生で歯の外側から針金で縛っていたら、
成長発育のじゃまになります・・・。
　小学生の時期は、
内側から成長を助ける装置を入れなければダメなのです。
その装置も、なるべくじゃまにならないシンプルな装置が理想です。
その装置が３Ｄリンガルアーチワイヤーです。
是非、お友達も助けてあげてくださいね。