今回の患者様は、遠方からセカンドオピニオンで来院されました。
かかりつけの歯科医院は、系列店舗が2~3軒ある自費専門の医院です。
一般の方向けに「咬みあわせの重要性」や、「インプラント治療」に関する書籍を、沢山出されています。
以前は、TVのワイドショーで見かけた事もありましたよ。
もちろん、素晴らしい事です。どんどん歯科治療の重要性をアピールして欲しいです。
でも患者様がこの自費専門医院を選んだのは、ワイドショーや書籍の影響ではありません。
以前のかかりつけの歯医者さんに、インプラント専門医院として紹介されたのです。
歯医者さんのお勧めですから、信頼してもう10年くらい通院されているそうです。
下の写真が、現在のレントゲン写真です。
沢山のインプラントが埋め込まれています。
歯が抜ける度に、インプラントを埋め込むだけ。
そのインプラントまで、またダメになる。
さてこの沢山のインプラントは、一度に埋め込まれたものではありません。
歯が抜ける度に、何度も繰り返し埋め込まれたそうです。
さらに、その埋め込まれたインプラントもダメになり数回除去されたそうです。
レントゲン写真を診ると、残念ながら感染しているインプラントもあります。
かかりつけの歯医者さんでは、前歯に追加のインプラント治療を勧められているそうです。
現在は、仮の歯が装着されています。
患者様は、歯が抜ける度に繰り返されるインプラント治療が嫌になりました。
そこでインプラント以外の治療法をネットで検索され、当院にたどり着いたのです。
某自費専門クリニックの仮の歯です。
下の写真が、初診時の正面写真です。
前歯部分に、仮の歯が接着材で固定された状態でした。
下の写真が、上アゴの咬みあわせの面の写真です。
この前歯部分に、インプラント治療を提案されているのです。
もちろん悪い事ではありません。
選択肢の1つだと思います。
過去の治療に疑問はありますが、現状の治療結果だけを見て、過去の治療を評価しても仕方が無いし意味がありません。
常に、最善の治療法が選択できるとは限らないからです。
患者様のお悩みは、
- 見た目が悪い前歯を、早くなんとかして欲しい。
- もうインプラント治療は絶対に嫌なのに、インプラントばかり勧められる。
- 本当は入れ歯も嫌だ。だから仕方が無いけど今までインプラントにしてきた。
- 今の自分にはどんな治療が良いのか、さっぱり解らない。
- ドイツ式入れ歯に興味がある。
みたいな感じでした。
入れ歯難民が後を絶たない理由?
このような悩みを抱えた患者様がとても多いのですが、そもそもどうしてなのでしょうか?
理由を考えてみました。
①そもそも日本の歯科大学は、入れ歯治療の教育が遅れているから。
入れ歯治療が苦手な歯医者さんが多い。
歯医者さんは卒業後に、最新の入れ歯技術を学ぶしかない。
(大学教育以外に、最新の技術があることすら知らない)
でもインプラント全盛期で、学ぶ機会がほとんど無い。
そのために、入れ歯よりもインプラント治療が良いと真面目に勘違いしている歯医者さんが増え続ける。
②保険診療の部分入れ歯の銀色のバネは、歯を引き抜く作用がある。
そのために、歯の寿命が短くなり欠損が進行する要因になる。
すでに海外(ドイツ)では教育すらされていない過去のものである。
(でも歯医者さんですら、その事実を知らない人が多い)
その結果、患者様は次々に歯を失い入れ歯の評価が下がる。
③入れ歯治療と同様、インプラント治療も苦手な歯医者さんが多い。
入れ歯と違い、外科処置を伴うために、歯医者さん自身も治療メニューに加えない人も多い。
そのために、紹介先の治療技術を的確に評価できない。
当たり前ですが、やらない分野まで熱心に勉強する人は少ないからです。
特に、多数歯欠損症例まで手がける歯医者さんは少ないのです。
④入れ歯が得意な歯医者さんは入れ歯だけ、インプラントが得意な歯医者さんはインプラントだけの偏った治療法になりやすい。
どちらにも精通するのは、時間もお金もかかります。
大学教育は、最低レベルの知識を習得するだけです。
自己投資し続けるのは、歯医者さんも大変だからです。
きっと、こんな感じだと思います。
嘘だと思うなら、かかりつけの歯医者に聞いてください。
これが歯科界の実態であり、私達の本音ですよ。
普通の総入れ歯も得意、全ての歯を失った方のインプラント治療も得意な歯医者さんは、とても少ないです。
もちろん、自分で得意だと思っているだけでは意味が無いです。
当たり前ですが、治療実績が全てです。
少なくとも、難しい症例を100症例程度経験した歯医者さんは少数です。
だから、あなたのように歯医者さん選びで苦労する人が絶えないのです。
と言うことで、今回の患者様の症例に戻ります。
治療計画は、
- インプラントの追加はしない。
- 残された歯も抜かない。
- 将来のトラブルに対応できる設計にする。
- できるだけ違和感の少ない設計にする。
- 費用を抑えるために、今回は上アゴだけにしたい。
という条件を踏まえて検討しました。
治療した結果、このように変わりました。
かかりつけの歯医者さんに、この画像を評価してもらってください。
下の写真が、治療後です。
当院が専門のドイツ式入れ歯です。
その中でも、インプラントと天然の歯を利用した特別な症例になります。
ドイツ式入れ歯を宣伝しているクリニックが増えてきましたが、
このような症例を多数経験しているクリニックは少ないです。
なぜなら、インプラント治療が苦手な場合が多いからです。
右側
左側
咬みあわせの面です。
入れ歯を外すとこんな感じです。
入れ歯と言うよりも、取り外し式のブリッジです。
噛み心地も、ブリッジと同様です。
治療の経過
参考までに、治療経過をご覧ください。
治療前です。
まずは、見た目が悪い前歯を、応急的に仮の歯に置き換えました。
感染しているインプラントを除去しました。
膿みが出ている真ん中のインプラント体です。
除去されたインプラント体です。
約半年後の状態です。
その治癒期間に、仮の歯を再制作します。
最終的な仕上がりのイメージを、あなたと共有するためです。
そして、いよいよ歯型採りです。
インプラント本体に、歯型採り専用のパーツを装着します。
インプラントの部品は、基本的にメーカーごとに互換性がほとんどありません。
前医に問い合わせ、使用メーカーを確認、全てのパーツを取り寄せ無ければなりません。
インプラント体は、世界中で数多くのメーカーから販売されています。
さらに同じブランドでも、沢山の種類があるのです。
何を使用するかは歯医者さんが勝手に決めているので、他院で埋め込まれたインプラントの再治療はとても面倒なのです。
今回も同じ患者様のお口の中に、なんと3つのブランドの製品が使用されていました。
慣れている私でも面倒です。
さらに今後も使用する予定が無い、三流?ブランドのパーツを全て購入しなければなりません。
ガッカリです。
インプラント本体の位置関係がズレ無いように、特殊な樹脂で歯型採りのパーツを固定します。
こんな作業も、面倒だから省略する歯医者さんが多いのですよ。
悪気無く、知らない歯医者さんも多いのですが…。
その上から、高精度のシリコン印象材で歯型を採るのです。
完成した、超精密加工された内冠と呼ばれる金属冠です。
こんな感じで、装着されます。
この外側に、入れ歯がはめ込まれるのです。
はめ込まれる、部分入れ歯です。
フリクションピンテレスコープと呼ばれる技法です。
企業秘密ですが、お見せしますね。
いかがですか?これが最先端の部分入れ歯です。
あなたの入れ歯と比べてください。
下の画像は、製作途中のものです。
今回は、特別にフルオーダーメードのセラミック冠で製作しました。
一本ずつ接着しています。
ドイツ式入れ歯を提供しているクリニックでも、このような症例を持っているクリニックは希ですよ。
当院は、あなたのために最善を尽くします。
悩んでいる時間がもったいないですよ。
気軽にご相談下さい。
歯医者さん選びは難しいですね?ではまた。