「入れ歯の型採りは、
柔らかい歯肉やお口の周りの筋肉の記録です」
筋肉が機能して、咬む力が加わった状態が理想です。
「あなたが咬んだ力で、型を採るのが最適です」
でも、実践している歯医者さんはとても少ないです。
下の画像を見て下さい。
5０代の女性の患者様です。
重度の歯周病の患者様です。
上の歯がグラグラで今にも抜け落ちそうでした。
治療前の写真です。

写真、左上の奥歯はすでに抜け落ちています。
次は、レントゲン写真です。
残念ながら、上アゴの歯は全て保存不能でした。

下アゴの状況も深刻です。かろうじて歯の動揺はありませんがとても残念です。
実は、２０年前の私の治療です。
とても忙しい方で、メンテナンスに来院されていませんでした。
今さらながら、メンテナンスの重要性を痛感します。
ご相談の結果、今回は上アゴのみ高機能な総入れ歯を製作する事になりました。
もちろん、上下同時に治療が理想的ですが仕方がありません。
皆さん、いろいろな状況がありますから私も現時点での最善を目指します。

仮の入れ歯を製作

さて、治療開始です。
ここで問題があります。抜いたら歯が無くなります・・・。
グラグラの前歯ですが、歯が無いよりはマシです。
まして女性です。１日でも、歯が無いなんて耐えられませんよね
でも大丈夫ですよ。歯を抜く前に仮の入れ歯を製作しておきます。
下の写真が、抜歯された歯です。
根っこの先端まで、歯石がこびりついています。
歯周病は恐ろしい病気ですね・・・。
お口の中で重症化するまで、気がつかないから普通に生活できますが
もしもあなたの手の指が、少しずつ膿んで溶け出したらどうしますか・・・？
夜も眠れないですよね・・・。

手遅れになる前に、年に数回は歯医者さんでメンテナンスを受けてくださいね。
下の写真が、当日に仮の入れ歯を装着した状態です。

さて、あなたは歯を抜いたらどのくらいで歯肉が安定すると思いますか？
答えは、今回のようにたくさん抜歯した時には、１年以上待ちます。
状況により、適時検討します。
そして下の写真が、抜歯後一年の状態です。

歯型採り

では今回は、歯型採りの解説です。
入れ歯のベテランのあなたならご存じだと思いますが、
多くの歯医者さんでは、入れ歯の歯型は１回しか採りません。
しかし、１回でも工夫をしている歯医者さんならまだマシです。
意味不明ですよね？
ということで、私が時間とお金を費やして学んできた方法ですが公開しますね。
私のブログを見ている歯医者さんが多いので
入れ歯難民の患者様が救われるように教えちゃいます。
まずは、既製品のトレーで歯型を採ります。
企業秘密ですが、当院は現在入手困難になった
総入れ歯専用の特殊な形をしたトレーを使います。
この秘密のトレーは、アゴの骨が痩せてしまった
いわゆる難症例の時にとても役立ちます。比較的簡単に綺麗な歯型が採りやすいのです。
持ってない歯医者さんが、可哀想・・・。
下の写真が、歯型です。

次にせっかく歯型を採ったのに、ナイフで切り刻みます・・・。

調整された歯型です。
カットする量やルールもあるのですが、秘密です。

そして、特殊な接着材を塗布します。

その上に歯型採りの材料を盛り付け、もう一度歯型を採るのです。
下の写真が、完成した歯型です。
とっても綺麗に採れましたよ。

下の写真が、完成した歯型の模型です。
歯医者さんや歯科技工士さんが見れば解りますが、上手に採れています。

この歯型でも、入れ歯は普通？に製作できます。
歯型の精度に点数をつけるなら、５０点くらいかしら・・・。
保険診療の入れ歯なら、費用的にはこれでもやり過ぎかもしれません。
でも、自費診療なら全くダメです。

あなた専用のトレーを製作

当院では、この歯型からあなた専用のトレーを製作します。
下の写真が、あなた専用トレーです。

でも、精度が５０点の歯型から製作したトレーですから微調整が必要です。
白い材料が、適合試験材料です。

歯肉を圧迫している部分に印をつけます。

その部分を削除します。

地味な作業ですが、何回も繰り返します。
納得いくレベルになったら、高精度シリコーン印象材で最終の歯型採りです。
シリコーン印象が剥がれないように、接着材を塗布します。
これも適当に塗る歯医者さんが多いのですが、むら無く丁寧にやらないと
トレーからシリコーン印象材が剥がれますから精度が落ちます。
歯医者さんがよく言う言い訳ですが、
「入れ歯の歯型は柔らかい歯肉の印象です、
そんなにこだわっても大差無いよ、時間の無駄・・・」
みたいな感じです。
だったら、どこまで手抜きがゆるされるのでしょうか？
教えて欲しいです・・・。
あなただったら、どっちの歯医者さんを選びますか？

そして、高精度シリコーン印象材で採った歯型です。

参考までに、一回目の歯型です。

歯型の縁の厚みや、形が全く違うのが解りますか？
入れ歯の製作は、誤差との戦いです。
歯型だけでも、これだけの誤差がでます。
そして今回のように、手間暇をかけても１００点は取れません。
でも、妥協したら切りが無いのです・・・。

咬んだ力で、歯型を採るのが最適です

大きく差が出る原因は、トレーの微調整やもちろん材料の差もありますが
既製品のトレーでは咬む力が加わらないからです。
お口の周囲の筋肉が機能した歯型が採れないからです。
だって歯医者さんが、手で軽くトレーを保持しているだけだからです。
今回は、咬んで歯型を採っています。
お口から材料がはみ出していますね・・・。
でも、これはワザとです。外からも足しています。
息ができません・・・。冗談です。数分ですから鼻でお願いします。

実は、唇の型を採っています。
これも、企業秘密だったのですが見せちゃいます。

この唇の型があると、上唇の位置が解るのです。
唇から見える前歯の長さで、口元のイメージは激変します。
入れ歯の前歯を並べる時に、唇の位置はとても参考になるのです。
こんな事まで考えてくれる歯医者さんはとても少ないです・・・。
歯医者さん選びは難しいですね。
当院は、歯科技工士さんと共にあなたのために手間暇を惜しみません。
入れ歯でお悩みのあなた、私で良ければご相談ください。