「柔らかいシリコーンのクッション付き入れ歯を、お考えのあなたへ！
いくら柔らかくても、咬みあわせが悪ければ
痛くて嚙めないって、知ってますか？」
下の写真を見て下さい。
総入れ歯です。

そして、裏側です。

総入れ歯のあなたには、見なれた写真だと思います。
でもよく見て下さい。
入れ歯の表側と裏側の色が何となく違うのが解りますか？
横から見るとこんな感じです。

裏側が白っぽいのが解ると思います。
実は、素材が違うのです。
表側は通常の入れ歯と同じ、ピンク色のプラスチック製です。
そして裏側は、身体に害の無いシリコーン製なのです。
良く歯医者さんの宣伝で、
「柔らかいから痛く無い」
「柔らかいから、しっかり噛みしめる事ができる」
「柔らかいから、入れ歯の緩みが少なく良く吸着する」
みたいに書かれています。
メーカーの宣伝文を抜粋してみますね。
「コンフォート」という会社です。
・・・総入れ歯のゆるみをピッタリ吸着
歯茎に当たる部分全体を特殊なやわらかいシリコーンのクッションが覆っており、
グッと噛みしめた際の痛みを緩和します。
また、シリコーンの適度な弾力が吸盤のような密閉性を生みだして、
噛むときに起こる入れ歯の様々な動きに強い吸着 力を生み出すことで
総入れ歯にありがちなゆるみを緩和します。
食事の際の細かな食べかすが入れ歯と歯茎の間に入りにくくなります。
…みたいな感じです。
私の医院でもコンフォートと、
その会社から独立したフェアリーというメーカのシリコーンを採用しています。
どちらも欠点は似たり寄ったりです。
以下の通りです。
①お口の中の過酷な環境で、24時間使用するのでシリコーンのクッションが
劣化したり、剥がれてきます。
メーカーの保証耐用年数は約３年です。
基本的には、およそ３年程度でシリコーンのクッションの張り替えが必要です。
通常、張り替えの費用は患者様の負担になります。
②シリコーンのクッションは、汚れやすいので毎日のメンテナンスが特に重要になります。
専用の洗浄剤の購入が必要です。
メンテナンスが悪いと、シリコーンの表面にカビが生えてとても不潔になります。
③シリコーンのクッションの厚み分だけ入れ歯の骨格部分のプラスチックが薄くなりの
強度が落ちるので、割れやすくなります。
そのため、金属プレートで補強が推奨されていますが、やっぱり割れやすいです。
トラブルが多いので最近では、お勧めしていません。
一番の理由は、メンテナンス不足によるシリコーン表面の汚れの付着です。
下の写真を見て下さい。
シリコーンを貼り付けてから、数年後です。
「入れ歯がゆるくなった」とお見えになりました。
汚れはありませんが、劣化が進んでいます。

今回は、シリコーンの張り替えはやめて
通常の補修用のプラスチック樹脂で裏打ちする事にしました。
劣化しているので、下の写真のように簡単に剥がれます。
３年以内では、ここまで簡単に剥がれる事はありませんが
部分的に剥がれる事はよくあります・・・。

この上に、補修用のプラスチック樹脂を流し込み、
形を整えて艶出しすれば完成です。
歯医者さん専用の樹脂なので、
ドラッグストアで売られているような安定剤とは別物ですよ。
別の機会に、またご紹介しますね。
コンフォートのような、柔らかいシリコーンのクッションなど、
いろいろな素材が開発されていますが、万能ではありません。
大切なのは、正しい咬みあわせを作り入れ歯の揺れを最小限にする事です。
いくらシリコーンのクッションが柔らかくても、
入れ歯が揺れて歯肉に四六時中こすれたら
痛みが出ます。
歯科治療の根幹は、正しい咬みあわせです。
入れ歯の裏側に、柔らかいシリコーンのクッションを貼り付けただけで
入れ歯の悩みが解決されるなら
もっと爆発的に普及するはずです・・・。
そんな、簡単な問題では無いのです・・・。
もしもあなたが、シリコーンのクッション付きの入れ歯を検討されているなら、
咬みあわせの知識が豊富な歯医者さんにお願いしてくださいね。
歯医者さん選びは難しいですね・・・
ではまた。