「保険診療と自費診療の違いって、
素材や作り方の違いだけじゃないって知ってますか?」
下の写真を見て下さい。
40代の患者様です。
入れ歯の相談で遠方から来院されました。
以前の記事の続編です。
治療前の状態です。

上アゴは、残念ながら総入れ歯になりました。
下アゴは、なんとか2本の歯が保存できました。
部分入れ歯を総入れ歯に、抜歯当日に改造
下の写真は、前歯を抜歯後に古い入れ歯を即日修理しています。

上アゴの修理前の部分入れ歯です。

抜歯当日に、総入れ歯に大改造した入れ歯です。

裏側は、抜いた歯肉に優しい柔らかい材料で裏打ちしています。

そして、すぐに歯型を採り新しい仮の入れ歯の製作開始です。
通常の保険診療ペースなら、完成までに3週間程度必要です。
どうしても、治療期間を短縮したい場合はご相談ください。
最短2日で完成
※もちろん、自費診療になります。
下の写真が、歯並びと咬み合わせの確認をしているところです。

総入れ歯を短期間で製作する場合は、
微妙な歯並びの追求はできません。
仮合わせの修正回数が増える程、治療期間も増えるからです。
よ~く考えてください。
仮合わせの段階では、入れ歯に使用される人工の歯は
ピンクのワックスに埋め込まれています。
歯科技工士さんが、1本1本全体のバランスを考えて丁寧に並べるのです。
例えば、あなたが前歯の見え方を1ミリ短くしたいと考えます。
その希望を叶えるためには、
歯科技工士さんは全ての人工の歯を並べかえる必要があるのです。
私が歯科技工士さんなら、泣きたくなります・・・。
技工士さんが並べてもこだわれば数時間かかります。そして、費用も・・・。
もちろん、全力で製作しますがあくまでも短期間で製作する仮の入れ歯です。
見た目の追求はある程度我慢が必要です。
もちろん予算が許すなら、抜いた歯肉が安定するまでの期間に
仮の入れ歯を再制作可能です。
*保険診療のルールでは、仮の入れ歯は製作できません。
最終的な入れ歯は、あなたが気に入るまで修正します
でも安心して下さい。最終的な入れ歯は、
目立つ前歯の見え方、歯の色、大きさ、形、歯並び、
咬みあわせの高さ、口元の張り具合などなど
あなたが気に入るまで無限に修正します。
何回修正しても追加料金はありませんよ。
私が、泣きながら全額負担しますから遠慮無く言ってください。
高品質な仮の入れ歯
下の写真が、完成した仮の入れ歯です。
もしも、このレベルの入れ歯を保険診療で提供したら行列が出来ると思います。
もちろん、すぐに倒産しますから出来ません。
今回は上の前歯だけ、特別に白い人工の歯を選んで遊んでみました。
下の前歯が、よく使われる標準的な色になります。
この色を基準に、あなたの好みを決めてください。

下アゴの入れ歯の裏側にも、歯肉に優しい柔らかい材料で裏打ちしています。

さて、この患者さまはこれから最終的な入れ歯の製作にはいります。
当院が専門のドイツ式入れ歯で計画しています。
上アゴは、シュトラックデンチャーと呼ばれる総入れ歯
下アゴは、レジリエンツテレスコープ式部分入れ歯
今回は、上下で8本の歯を抜いているので
約1年程度は、歯肉が安定するまで待つ必要があります。
上アゴの治療前です。

歯を抜いて1ヶ月後の状態です。

下アゴの治療前です。

歯を抜いて、約3週間後の状態です。
保存予定の歯は、根っこの治療後に
グラスファイバー製の補強芯を入れて樹脂で土台を作りました。

虫歯予防の金属冠
虫歯予防の金属冠を装着したところです。
実は、ドイツ式入れ歯を提供している医院でも、
きちんと虫歯予防の金属冠を装着してもらえる医院は少数です。
あなたは、大丈夫ですか?虫歯になりますよ・・・。

さて、まだ歯を抜いて1ヶ月弱の状態ですが、
抜歯直後の歯肉は急激に痩せていきますので
ユルくなってきたそうです。
ということで、入れ歯の内面を裏打ちします。
こんな流れです。
まずは、汚染された表面を一層削除します。
粉塵まみれです・・・。面倒です。
まだ新しいので、ほとんど汚染されていないのですが
念のため、あなたの為に手間暇をおしみません。

紙テープでマスキング
そして歯医者さんもこのブログをよく見ているので
企業秘密なのですが、見せちゃいます。
紙テープでマスキングするのです。
かかりつけの歯医者さんに、教えてください。

歯医者さん専用の裏打ち専用特殊樹脂です。ポリグリップなんて必要無しです。



お口の中で、数分間硬化待ちです。じっと我慢ですよ。

取り出します。

大まかにバリを除去したところです。

下の入れ歯も同様です。

硬化促進剤を溶かしたお湯のなかで、しっかり固めます。

余分なバリを、バリッと除去します。テープを貼ったので簡単です。
マスキングテープを貼らないと、バリの除去がとっても大変です。


丁寧に調整
適合試験材料で、何回も裏側を調整します。


今回は、上下同時に裏打ちしたので治療時間は約2時間弱でした。
写真だとあっという間ですが、とても大変な作業です。
このような作業をすれば、出来の悪い保険診療の入れ歯でも
ある程度は快適になります。
でも、ほとんどの歯医者さんはやりません。
理由は、大赤字で倒産するからです。
だって、無料だから・・・。
保険診療のルール
新しく製作した入れ歯に対して、
短期間でユルくなって裏打ちしても保険診療のルールでは
料金設定がありません。
半年経過すれば、数千円程度は頂けます。もちろん、赤字ですけど・・・。
参考までに、保険診療の料金表です。
http://www.koyu-ndu.gr.jp/images/20200401tensu.pdf
サッパリ解らないと思いますが
とにかく世界一安い事だけは確かです。
私が付きっきりで、2時間働いて一万円では7人のスタッフの人件費すら払えません。
あなたが歯医者さんなら頑張れますか?
制限の無い自費診療
今回の患者様は、自費診療ですから短期間でも
ユルくなれば何回でも裏打ちをします。
ちなみに、今回でこの作業は上アゴが3回目、下アゴが2回目になります。
おそらく2~3ヶ月後には、また同じ作業が必要になると思います。
新しい入れ歯が出来るまでの間、できる限り快適に過ごして頂けるように努力します。
よく患者様から質問をされます。
保険診療と自費診療の違いについてです。
今回の記事で、少しはご理解いただけると助かります。
今は情報があふれています。
かかりつけの歯医者さん以外も、
いろいろと検索してくださいね。
あなたが、良い歯医者さんに出会える事をお祈りしていますね。
歯医者さん選びは難しいですね・・・
ではまた。