「あなたの総入れ歯が、落っこちたり、プカプカ浮き上がる理由」
下の写真を見てください。
下アゴの総入れ歯です。
正確には、まだ入れ歯の下に歯が２本残っています。

下の写真が、お口の中です。

この患者様は、ドイツ式入れ歯のレジリエンツテレスコープ式
部分入れ歯を予定しています。
２本の歯が残っていますが、
状態が悪い１本はマンホールみたいに金属のフタがしてあります。
もう１本には、最終的には超精密加工された金属冠を装着します。
現在は、虫歯予防の金属冠を装着してあります。
歯を数本抜いたので、歯肉が安定するまで半年～１年程度は
最終的な歯型が採れません。
しばらくは、仮の入れ歯で過ごさなければなりません。
下の写真が仮の歯の状態です。
歯を抜く前に、応急的に製作したので装着時に多くの修正が必要でした。
上下の見た目のバランスはよくありませんが、
とりあえず痛く無く食事はできるそうです。

今日は、抜歯後１ヶ月程度経過したので下の入れ歯の調整です。
さて、総入れ歯のあなたならよく解ると思いますが、
下アゴの総入れ歯は、お口を開けると浮き上がる方がほとんどです。
よく総入れ歯の患者さまに、
「先生～、入れ歯が口の中で浮き上がって
いつも踊ってるんです・・・
何とかなりませんか・・・？」
みたいに言われます。

頬や舌の筋肉の力を利用する

総入れ歯は、入れ歯の内側が唾液で満たされて
咬む力で歯肉と密着する事により
吸盤みたいに吸いつく原理です。
咬み合わせが悪かったりすると
入れ歯が転覆するので入れ歯が踊る原因になります。
上の入れ歯なら、咬むたびに落っこちてしまいます・・・。
さらに、総入れ歯を安定させるためには
咬み合わせ以外にもとても大切なことがあります。
頬や舌の筋肉の力を利用して、入れ歯を支えるのです。
もちろん、総入れ歯は取り外し式の道具ですから、
入れ歯の吸着力以上の力が加われば、
外れるのは仕方がありませんが
頬や舌の力が上手く利用できるような入れ歯なら
格段に入れ歯は安定します。
もちろん、道具としての限界はありますよ。
使いこなす努力や、リハビリも必要です。
でも、そもそも入れ歯が安定できるような
咬みあわせや、機能的な形をしていなかったら
残念ながら、リハビリしても無駄な努力に終わります。

旧式な理論

専門的になりますが、
多くの日本の歯科大学では、
入れ歯が安定するような
旧式な咬みあわせの理論は教えてくれますが、
頬や舌の力を効果的に利用して
入れ歯を安定させる形は教えてくれません。
さらに、問題があります。
旧式な咬み合わせの理論で
入れ歯の人工の歯を並べると
頬や舌の力を、効果的に利用できるような
入れ歯の形を再現しにくいのです。
日本の多くの総入れ歯（自費診療も含めて、保険診療の入れ歯のほとんど）は、
痩せ細った歯肉にあわせて人工の歯を並べる
旧式な理論で製作されます。
その結果、口元の張りを歯があった時と同じように
若々しく再現できない事が多くなります。
総入れ歯の方で一番多いのが、
入れ歯になったら口元が寂しくなって老け込んだ・・・
という悩みです。
そもそも、旧式な理論では無理があったのです。
総入れ歯は、
精密な咬みあわせと
舌や頬の筋肉を効果的に利用できて初めて
安定して
よく噛めて
見た目も良く
お顔が若返る道具になるのです。

安定性が格段に向上する修正作業

さて、話を戻します。下の入れ歯の修正です。

入れ歯の裏側です。

入れ歯は、外形がとても大切です。
今日は、内面の舌に触れる部分の形を修正します。
指先の部分が、膨らんできたのが解りますか？
面倒ですが、片側ずつ足していきます。

次に反対側です。

そして、内面を全体的に裏打ちします。
そして、微調整します。

参考までに、調整前です。
違いが解りますか？

上から見ると修正前は

修正後は、こんな感じです。
上の写真より、内側が拡大されているのが解りますか？

ここに、あなたの舌が乗っかることで
入れ歯を舌の力で、下方に押しつけやすくなります。
特別に意識しなくても、
舌が入れ歯の上に、自然に乗っかりますから安定しやすいのです。
下の総入れ歯は、
この内側部分を修正するだけで安定性が格段に向上します。
企業秘密ですので、誰にも教えないでくださいね。
冗談ですが、この作業はとても大変です。
時間もかかります。

良い入れ歯は保険診療ではできません。

流れ作業の保険診療で、
たくさんの患者様をこなさなければ経営が成立たない
日本の歯科医療制度では無理があります。
さらに、ここの部分が総入れ歯の安定に
とても大切な部分だと知らない歯医者さんがほとんどです。
かかりつけの歯医者さんを虐めないでくださいね。
そして、そもそも最初の状態が
あまりにも低レベルな入れ歯では、
即日では修正不能です・・・。
残念ながら、良い入れ歯は保険診療ではできません。
快適で長持ちする入れ歯は、安価には提供できないのです。
今は情報があふれています。
かかりつけの歯医者さん以外も、
いろいろと検索してくださいね。
あなたが、良い歯医者さんに出会える事をお祈りしていますね。
歯医者さん選びは難しいですね・・・
ではまた。