「入れ歯の上手な歯医者さんは、
咬んだ状態で歯型を採ります」
「歯医者さんがこっそり教える、真面目な歯医者さんの選び方」
下の写真を見てください。
６０代の男性の患者様です。
今回は、入れ歯の歯型採りのご紹介です。

正面から見るとこんな感じです。

多くの歯医者さんでは、入れ歯を希望された場合は
どうしても保存出来ない歯を抜いたら
すぐに入れ歯の歯型を採り
入れ歯を作り始めます。
あなたにとっても、早く入れ歯が出来上がるので嬉しいですよね・・・？
私だって出来ることならそうしてあげたいです・・・。
でも歯科治療は、そんな簡単な仕事では無いのです。
歯を失った患者様は、たくさんの問題を抱えています。
例えば
虫歯、
歯周病、
歯並びの不正、
咬みあわせの異常、
アゴの関節の異常、
唾液の量や性質
虫歯や歯周病菌の性質
生活習慣
食生活
歯科以外の内科的な問題
歯科に対するネガティブな精神的問題
治療法に対するこだわり
経済的な問題
時間的な制約
等々です。
今回の患者様は、多くの医院でインプラント治療の提案を受けたそうです。
でも、外科処置が嫌いで長い間治療に踏み切れないでいました・・・。
そして、ドンドン病状が進行したのです・・・。
歯科業界はインプラント治療が最善の治療法のような風潮があるようですが、
それは間違いです。
確かにインプラント治療は素晴らしい治療法です。
でも、それを望まない患者様も多いのです。
もしも私が歯を失ったら、インプラント治療は選択しません。
理由は、身体に異物を埋め込むのが怖いからです・・・。
間違いなく私は、高性能な入れ歯を選択します。
「入れ歯なんて時代遅れの治療法だ」みたいに、
間違った認識をしている歯医者さんも多いようですが
そろそろ、認識を改めた方が良いと思います。
インプラントも入れ歯も、単なる治療法の一つです。
お家に例えるなら、木造か鉄筋コンクリートかみたいな程度です。
正しい診断をして、正しい理論で設計し、
トレーニングを受けた歯科医、歯科技工士、歯科衛生士、
サポートスタッフが力を合わせてよい治療が出来るのです。
あなたに質問ですが、
６０代のあなたがインプラント治療を希望されて
１０～２０年後の年齢となり
再治療となった時
もう一度、怖い外科処置が必要なインプラント治療を選択しますか？
私は、弱虫なので絶対に嫌です。
入れ歯治療で、あなたの希望を全て叶える事が出来るとは考えていませんが
インプラント治療も万能ではありません。
あなたとじっくり話し合い、あなたに合った治療法が最善の治療法なのです。
と言うことで、本題に戻ります。

基礎治療が終って、下の写真のようになりました。

今回は、５本の歯を保存して当院の得意なドイツ式入れ歯です。
レジリエンツテレスコープ式部分入れ歯です。
参考までに、下記のサイトも見て下さい。
★少ない歯を効果的に利用出来る、
画期的な入れ歯レジリエンツテレスコープのご紹介
下の写真が内冠と呼ばれる、
超精密加工された金属冠を装着したところです。
この段階は、まだ最終的な仕上げ研磨はしていません。

この金属冠の上から、最終的な入れ歯の歯型を採ります。
高価なシリコン印象材と呼ばれる材料を使用します。
そして、あなた専用の歯型を採る道具も用意しますよ。
下の写真が、あなた専用の歯型を採る道具です。
個人トレーと呼びます。

そして、下の写真を見てください。

これは、お口の中に装着された金属冠に装着する道具です。
専門的になりますが、オクルーザルコアと呼びます。
ドイツ式入れ歯を取り扱っている医院はたくさんありますが
この道具を製作して、歯型を採っている医院はとても少ないのです。
嘘だと思うなら、歯型を採ってもらうときにこの記事を歯医者さんに見せて下さい。
ドイツ式入れ歯の正しいトレーニングを受けている歯医者さんは、
必ずこのオクルーザルコアを使って歯型を採ります。
例外は、ありません。
この道具を使用しないと、精密加工された金属冠の位置に狂いが出るのです。
精度の高い仕事が出来なくなります。
歯科治療は誤差との戦いです。
是非、歯医者さん選びの参考にしてくださいね。
さて下の写真は、お口の中の金属冠にこの道具を装着したところです。
変形防止の為に、強固な金属プレートで補強されています。

そして、いよいよ歯型を採ります。
下の写真を見ると解ると思いますが、咬んだ状態で歯型を採っています。

実は、入れ歯の歯型は咬んだ状態で採らないと良い歯型が採れません。
硬い歯の型を採る場合は、咬んだ状態を再現する必要はありません。
でも、柔らかい歯肉の型を採る入れ歯の場合は
咬んだ時の状態を再現しなければダメなのです。
当たり前ですが、柔らかい歯肉なので
咬んだ時と、咬まない時では歯肉の形が大きく変わります。
咬む力で押されて、歯肉がつぶれて変形するからです。
歯医者さんなら誰でも解っているのですが、
これを当たり前のように実践している歯医者さんはとても少ないのです。
理由は、歯型を採る道具の調整にとても手間暇がかかるからです。
と言うことで、下の写真が完成した歯型です。
とても綺麗に歯型が採れました。苦労した甲斐があります。

咬む力が加わり歯肉が変形し、
実際に使用される状態に近い歯肉の型が採れています。
ここからは、正確に歯型を作る歯科技工士さんの出番です。
私が手抜きをしたら、
いくら一流の歯科技工士さんが丁寧に歯型を製作しても無意味なのです。
と言うことで、
入れ歯のあなたに真面目な歯医者さん選びのコツを教えますね。
入れ歯の歯型は、
あなた専用の歯型を採る道具（個人トレー）で
咬んだ状態で採ってもらえる歯医者さんを選んで下さい。
是非参考にしてくださいね。
でも、なかなか出会えませんよ・・・。
歯医者さん選びは難しいですね・・・
ではまた。