2016年1月24日　ブログより
　前回は、診療に使用した器具、器材の
滅菌消毒に使用される代表的な器械、
高圧蒸気滅菌器（オートクレーブ）のお話でしたね。
　今回は、その続編です。
読売新聞の記事にあった、
「歯科医院の７割が、切削器具の使い回し・・・」
の私達が使う切削器具とは、下の写真の事です。


歯医者さんが、
手に持っている「キーン」と音がする例のアレです。

私たちは、タービンとか
ハンドピースとか呼んでいます。
歯医者さんで、
あなたも見たことがあるかも知れませんね？
そして、この器械の先に、
棒が付いていますね？
これは、棒の表面に
ダイヤモンドの粉末が付いています。
この棒が、
高速回転してあなたの歯を削るのです。
何か痛そうですね・・・。
痛みの原因は、
主に振動と摩擦による発熱です。
　余談ですが、私の医院では、
ドイツ製の診療台を使って、
大量のお水で冷やして発熱を抑えています。
国産とは、注水量が違います。
　さらに、
ドイツ製の振動が少ない、
モーターを使用しています。
歯のダメージを最小限に抑えていますよ。
　その記事は、
「そんな少しで大丈夫ですか？
そんなお水の量だと、
あなたの歯の神経、死んじゃいますよ・・・」
を見てくださいね。
　さて、話を戻しますね。
「７割の歯科医院では、
歯を削る器械を適切に消毒していなかった」
と報道されたのですが、
なぜそんな事が起きるのでしょうか？
多分、以下の理由です。
①お金がかかるから、できない。
　
　ちなみに、私が好んで使用している
ドイツ製のハンドピースは、
１本２０万くらいしますよ。
　それを、患者さんの人数分
買い揃えたらどうなりますか・・・？
　１日３０人×２０万円＝６００万円ですよね・・・。
　使いまわせば、極端に例えれば、
１本分の２０万円だけですよね・・・。
②消毒に時間がかかるから、できない。
　この器具の消毒は、前回の記事で紹介した
高圧蒸気滅菌器やガス滅菌、それに準じた器械で
消毒するのが望ましいです。
　ただし、
この器械は消毒に時間がかかるのです・・・。
１回の消毒に、
高圧蒸気滅菌器で約１時間３０分かかります。
　つまり、あなたに使用した器具を
きちんと消毒して、
次の方に使用するまでに、
１時間３０分必要なのです。
　そして、
高温高圧の蒸気に器械をさらしますから
器械のダメージが大きく、
寿命が短くなります・・・。
　１日に何回も、
熱をかければ当たり前ですよね・・・
壊れれば、メンテナンス費用に数万円です・・・。
③人手が足りないから、できない。
　多くの歯科医院は、
消毒専門のスタッフを雇用できる程、
余裕がありません。
　なぜなら、よく考えてください、
あなたは歯医者さんにかかって、
窓口でいくら支払いますか？
　３割負担なら、あなたが支払った金額の
約３倍が医院の収入ですよ。
千円なら、約三千円が医院の収入です。
　例えば前歯の、歯と歯の間の虫歯を削って、
白い詰め物をする治療が、
１本たったの三千円です。
あなたの、窓口での支払いは約千円ですね。
治療時間が、最低３０分はかかりますよ。
こだわれば、１時間以上かかります・・・。
　お掃除や消毒などをして、
次の患者さんを誘導する時間を考えたら
１時間弱はかかります。
　歯科医・アシスタントの二人で売り上げが、
１時間弱で、三千円です。
　この他に、受付のスタッフだって必要ですよね・・・。
最小限の三人で、時給千円ですよ・・・。
コンビニで、バイトしたくなります・・・。
その他に、消毒専門のスタッフまで
雇用できると思いますか？
　何故か、まだまだ世間では、
歯医者は儲かる職業と
思われているみたいですが・・・。
　何年か前の経済紙に、
「歯科医の４人に１人が、
年収３００万円以下」
と書かれてましたよ・・・。
　あなたが知らないだけで、
国が認めている保険治療は、
基本的には赤字です。
　薄利多売で、出来るだけ少ない時間で、
多くの患者様をこなすしかないのです・・・。
　丁寧にやれば１時間かかる治療を、
３０分でやるのです・・・。
それでも、時給千円の世界です・・・。
　借金が払えません・・・。
　治療の質を追求できる報酬では無いのです。
　だからと言って、
治療器具を使いまわして良いとは言いませんが、
あまりにも保険治療費が安すぎるのです・・・。
　インターネットで、
「歯科治療費の国際比較」と検索してください。
あなたが知らないだけで、
日本の歯科治療費は先進国の中で
最低価格なのですよ・・・。
　
あなたが、歯医者さんだったらどうしますか？
赤字覚悟で、頑張れますか・・・。
　私は、この記事で同業者の悪口を
言いたいのではありません。
　あなたに、もっと関心を持って欲しいだけです・・・。
　少しも待たずに、予約時間通りに、快適な空間で、
完璧に消毒された器具、器材を使用して、
高品質な材料と、
最新の技術、最高のおもてなしを、
世界最低料金で提供するのが、
どんなに困難な事か知って欲しいのです。
　ブラック企業なんて言葉がありますが、
保険医療は、私たちが国に低賃金で
雇用されているようなものかもしれません・・・。
　保険医療も日本全国、一律料金では無く、
医院ごとにランク分けすれば良いと思います・・・。
　①衛生面では多少問題があるが、
低価格を売りにする医院
　
　②衛生面は問題が無いが、
多少価格が高い医院
あなたが自由に選べば良いのです。
　何でもかんでも、
一律にするから無理があるのです・・・。
　愚痴は、このくらいにして当院の自慢です。
例の歯を削る器械です。

当院のストックです。こんなにあります。

当院の１日の患者数では、
使い回したくてもできません・・・。（笑）
　仮に、現在の２倍の患者数になっても、
お昼休みが約２時間ありますから、
消毒できちゃいます。
　そもそも、今でも手一杯なのに、
これ以上は対応できませんが・・・。
　そして万が一の時に、
こんな秘密兵器もあります。
下の写真です。


これは、ドイツ製の小型の高圧蒸気滅菌器
（オートクレーブ）です。
通常の器械は、
消毒に１時間３０分程度かかるのですが、
この器械は、なんと１５分で完了します。

　ほとんど出番がありませんが、
あなたのために用意してます。
　そして、忘れていけないのが、
歯を削る機械の先に装着される、
ダイヤモンドの粉末がコーティングされた棒です。
ダイヤモンドバーと呼びますよ。
これも、使い回しは厳禁です。

あなたの後ろの、引き出しの中には、



大量の消毒された、
ダイヤモンドバーがストックされていますよ。
使い回しなんて、したくてもできません。
ちなみに１本、１～２千円しますよ・・・。
数えてください。
これも、あなたのためですよ。
私、歯科オタクなので・・・。
今年も、高性能の歯を削る器械を買いますよ～！
もちろん、ドイツ製です！
国産も使いましたが、安物はだめです・・・。
ではまた。